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2024年10月18日

北川啓介教授と北川珠美研究員がグッドデザイン賞、グッドデザイン・ベスト100、グッドフォーカス賞[防災・復興デザイン]を受賞


10月16日に、社会工学類の北川啓介教授と北川珠美研究員が、『応急住宅 令和6年能登半島地震被災地へのインスタントハウスの設置』にて、2024年度グッドデザイン賞、グッドデザイン・ベスト100、グッドフォーカス賞[防災・復興デザイン](日本デザイン振興会会長賞)を受賞しました。

 

『応急住宅 令和6年能登半島地震被災地へのインスタントハウスの設置』

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北川教授及び北川研究員は、東日本大震災の被災地の避難所を訪れた際の小学生の声をきっかけに研究開発したインスタントハウスを、より安価に、より簡便にし、令和6年能登半島地震の発災時には、翌日に被災地入りして届けました。その後も被災地から要請を受けて急ピッチで大量生産の体制を整え、被災者とともにつくり、被災者に愛着をもってつかいこなしていただくことで、未来に向かう希望も届けたいと支援を続けています。

 

北川啓介教授と北川珠美研究員のコメント

デザインが生まれた理由/背景:
もともと私たちは、名古屋工業大学の教授と研究員として、美しくかっこいい建築物の実現に懸命になっていたところ、東日本大震災の被災地の避難所を訪れた時に出会った小学生のふたりの男の子が、私たちの人生を180度変えてくれました。視察を終えて帰ろうとしたその時、ふたりの小学生が私の手を引き、グラウンドが見える場所まで連れていき、「あそこに仮設住宅が建つのになんで3カ月から6カ月かかるの?大学の先生だったら来週建ててよ!」と悲痛な表情で訴えました。その日からその言葉が頭から離れません。思い起こせば、学生の頃から、世界中の美しい建築や都市を実際に体感すべく旅する中で、それらよりも、空港や駅を降り立つと手を差し伸べてきた幼い子どもたちのことが気になって仕方がありませんでした。建築の原点に帰ってあの子どもたちの想いに応えたい。その決意が国内外の住宅困窮者へのインスタントハウスのお届けの実現に繋がりました。

デザインを実現した経緯とその成果:
東日本大震災被災地から戻る道中から、小学生からの「仮設住宅が建つのになんで3カ月から6カ月かかるの?」に応え、既存の建築物の、重い、高価、硬い、部材が多い、といったデメリットを書き上げ、結果的にその40項目をクリアする建築を求めて思考を巡らせました。その際、40項目のデメリットの対義語を、軽い、安価、柔らかい、部材が少ない、のように書き上げ、それらを通底する建築のメカニズムを勘案しました。結果、運搬も施工も簡便で、短工期で、断熱性も遮音性も高く、廉価性‧簡便性‧速度性‧技術性‧汎用性にも優れた構築物を実現すべく、「空気」を多分に活用した構造物の実証試験を繰り返しました。長い歴史の中で培われてきた既存の事物が持つ多くのメリットの対義をすべてデザインすることはハードルが高そうですが、引き算ベースで考えることで、国内外での生産から活用までの多様な5W1Hをクリアした住まいの価値を創造しました。

デザインのポイント:
1.簡便な加工と施工により、発災後の数日内に、丈夫で快適かつ安価なインスタントハウスを大量にお届けできる
2.家を失う体験を経た被災者が、おうちを思うままに「つくる」ことで、未来へ目を向けていくきっかけとなる
3.家の怖い体験を経た被災者が、おうちを思う存分に「つかいこなす」ことで、再び、おうちへ愛着を深めていく

令和6年能登半島地震の被災地支援について:
発災の翌日の2024年1月2日(火)以降、石川県内外の被災地全域からインスタントハウスをご要請いただいては、できるだけ早く出向き、一日でも一時間でも早く少しでも快適な生活をお送りいただけますよう動いてまいりました。とても悲しいことに、同年9月21日(土)から22日(日)にかけて、同じ能登半島全域に豪雨災害が発生してしまいました。私どもは、9月22日(日)午前中には能登半島へ入り、現地の行政や住民の皆様と連絡をとりあって、9月26日(木)から屋外用インスタントハウスを継続的にお届けしております。被災地がようやく復旧と復興の第一歩を踏み出したその時に、「地震よりつらい」と言葉にされるように、ふりだし以下に戻されてしまった状況ですが、インスタントハウスをお届けいたします際に、常に、「国内外の皆様から名古屋工業大学基金へのご寄附を原資に、実費のみでお届けいたしております」と、同基金へ温かいご寄付をいただいておりますこと、また、「ご支援いただいています皆様と共にやっていきましょう」とお声がけし、私どもも、可能な限りに迅速に対応している次第です。
1月から9月中旬まで、屋外用インスタントハウス約178棟、屋内用インスタントハウス約1050棟を被災地全域へお届けしてまいりました。そして、豪雨災害の発災以降は、屋外用インスタントハウス13棟をお届けしてまいりました。今後も、皆様からのご寄付を原資に、豪雨災害の影響の大きい輪島市と穴水町と珠洲市と能登町を中心に、追加で約20棟をお届けしてまいる予定です。
被災地の皆様は、限りなく温かい方々ばかりで、私どもがお届けしております道中にも皆様からお声がけいただき、その温かさもあり、私どもも今年に入ってだいぶ涙もろくなりました。近しい方を亡くされて心身ともに疲弊されている方も少なくない皆様の避難所での生活も、避難所が開設されていた時は、屋根がついている屋内用インスタントハウスのご導入後に、感染症と低体温症状の発生が低減した、との医療チームからの報告も受けております。ご自宅や職場を損壊したり焼失したりされた皆様が、被災の当初に、「家が怖い」「家が襲ってくる」ともお話されていることに、建築の専門家のひとりとして極めて居た堪れなかったのですが、屋内用と屋外用のインスタントハウスをお届けできてから、お子様もご高齢の方も皆様が、間取りも照明も装飾もデザインして、ご自身の思うままに愛着ある「おうち」になったとお話されている姿に、また涙が溢れてまいります。まだまだ今を生きることに精一杯のところ、建築学から被災された皆様へ希望をお届けできている実感もございます。おうちができた時に、「もう建築家ですね!」とお話しますとニコッとしてくださいます。「ただいま!って言えるおうちをありがとう!」とお話くださるかたもいらっしゃり、インスタントハウスの「ハウス」という”住処”としての役割に加えて、「ただいま!」を意味する「I’m home!(アイムホーム!)」の「ホーム」という自分たちの”拠点”としての役割もお届けできているとも実感している次第です。
私どもも、すっかり第二の故郷となりました被災地全域で、まだまだ、まだまだ、被災された皆様に寄り添って、最大限に尽力して参ります。
国内外の皆様から貴重なご支援を賜っておりますことに、あらためて、何度も、心より深く感謝申し上げます。

関連リンク

グッドデザイン賞 『応急住宅 令和6年能登半島地震被災地へのインスタントハウスの設置』

北川啓介研究室

名古屋工業大学基金 令和6年能登半島地震被災地への簡易住宅(インスタントハウス)設置支援

名古屋工業大学レポート2023「地球上で家に困る人々が快適で丈夫な家をもつあたりまえを実現する」

YouTubeチャンネル「ミライストリーム」「未来の日本を支える新しい住宅のヒミツに迫る!」

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